いただきもの・「Argento e rosso」夏秋香様より












「―――っ総大将である貴方がそんな弱気でどうするのですか!!」
「ディオメデス!!落ち着け!」
 地面を蹴立て座していた席から立ち上がったディオメデスの腕をとっさに掴み、そのまま総大将であるアガメムノンの元へと駆け寄ろうとした身体を引き留める。体格にそう差異はなくとも、やはり年若い彼と自分とでは勢いが違うのかと、己の頬を伝う汗にオデュッセウスは微かな焦りを覚えた。確かに掴んで、押し留めているはずのディオメデスの身体が少しずつ前に進んでいるように思うのは、自分の力への自信の無さがそう見せるのだろうか。
「定められた席について、意見があるのであればその場から口にしろ!諸侯らに失礼だろう!」
「だが!先ほどのアガメムノンの発言はあまりにも弱気すぎる!!そんなことでは兵士たちの士気も下がるばかりではないか!我らが総大将アガメムノンよ、貴方はこの戦に勝つ気があるのですか!!」
「いいから黙れこのクソガキ!!アガメムノンが何を考えての発言なのか考えてから意見しろと言っているんだこっちは!!」
 言葉と共に振り下ろされた実力行使に、ディオメデスの頭に星が散る。渾身の一撃を見舞ったせいで痺れている己の拳を解き、オデュッセウスは改めて真面目な顔で痛みを堪えているディオメデスを見た。
「・・・お前のその怒りは、ここに居る全員が共通して思っていることだ。だが、だからと言って直情的に怒りを晒すなど愚かしいにも程がある。その頭に詰まった頭脳はお飾りかアルゴス王よ。偉大なる父親の名を穢したくないのであればもう少し考えると言う事を覚えるべきだな」
「・・・・・・・すまない」
「いや、こっちも殴ってすまなかった。そうでもないと止まらないと思ったもんでな。―――議論を中断させてしまい、申し訳ない。諸侯らにも礼を欠いた事を詫びさせてくれ」
「・・・未熟なあまり怒りに我を失いかけた事、心よりお詫び申し上げる」
 しゅん、と意気消沈させて非礼を詫びるディオメデスに、同席していた諸侯達とアガメムノンが鷹揚に頷き、そのまま何事もなかったように会議が進められたのだった。


*その後*

「やれやれ、やーっと会議が終わったな。あー疲れた」
「・・・・・・・すまない」
「うん?それは何に対しての詫びなんだ?」
「・・・・・また、会議で貴方に迷惑をかけただろう。・・・俺はいつまでたっても未熟だな。貴方やアガメムノンの落ち着きをうらやましく思う」
「なんだそんなことか。俺らだってまだまださ。老ネストルに言わせれば青二才もいいとこなんじゃないか?」
「だが・・・それでも俺は貴方の事がすごいと思う。オデュッセウス」
「んだよ、照れるだろそんな真面目に言われたら!ほらもういいから、次からもう少し感情を制御できるようになればいいだろう。まだお前は若いんだ、そうやって経験を積んで成長していけばいいさ」
「・・・そうだろうか」
「そうそう!あー、腹減ったなー早く戻ってメシにしようぜ!ほら、早く来いよディオメデス!」
「―――ああ!」









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


アガメムノンに噛みつくディオメデスをたしなめてくれる兄貴っせうす。いや、おとんか。どっちだろう。どっちもか!
若気の至り大爆発…ほんとに…ぴゅあなんですね…でぃおみーちゃんは…(妄言)


素敵なssありがとうございましたーーー!







(2013.08.31)


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